刺繍する犬 Stitch Dog
個展「手仕事と電子 」
2024年10月12日(土) - 11月2日(土)
開廊時間:13:00-19:00
閉廊日:日曜日
このたびYOD Galleryにて弊廊では二度目となる、刺繍する犬 (Stitch Dog) の個展「手仕事と電子」を開催いたします。
縫製行為は、女性を社会的および政治的領域から疎外するための構造として機能してきたという一部の議論を踏まえ、また、美術史および美術批評においても、しばしば「手芸」として一段低くみられてきた傾向がありました。
作家は、1980年代に普及したパソコンや電子機器の基盤といった、当時主として男性が主流のユーザーであったテクノロジーに由来するモチーフを意図的に取り入れています。この試みは、「縫う」という行為が長らく手芸の一領域として位置付けられ、特に女性の労働の象徴として捉えられてきた歴史的文脈に対して批評的に応答するものと言えるでしょう。
「iPad Broken Display シリーズ」においては、壊れたiPadを解体し、刺繍によって平面化することにより、デジタル技術の一時性と物理的形状の崩壊を視覚化しています。これらの電子機器は、いずれ朽ち果て形態を喪失していく運命にある一方で、糸によって形象化され記録されることで、その一時性を超えて持続可能な形で残存し得る存在へと昇華されます。このプロセスにおいて、作家は社会的抑圧や「手芸」に内包されるジェンダー的規範に対して抵抗を試みるとともに、社会的に周縁化され、忘却され得る存在の証明として、糸による繋ぎ止めと記憶化を実践しています。こうした制作行為は、物質的な劣化と消失に対する抵抗であると同時に、作家自身の存在証明が文化的・歴史的記憶の中で保持され続けることを意味するものといえるでしょう。
10月12日(土)は作家本人が在廊いたします。是非この機会にご高覧ください。