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川又仁奈
「光の透過」
2016年1月16日(土)~ 2月6日(土)
閉廊日:日・月曜日、開廊時間:12:00~19:00
レセプション・パーティー:1月16日(土)18:00~
このたびYOD Galleryでは、弊廊では2013年以来二度目の展示となります川又仁奈 (Nina Kawamata, b.1987)の個展「光の透過」を開催いたします。
川又はこれまで、伝統的な日本画の技法を駆使しながら、草花で装飾された西洋の神話に登場するような人物や天使を創造的に描くことにより、理想郷や崇拝の対象、自然と人間というテーマで独自の世界感を表現してきました。 今回の展示では、人の感情や心象により焦点を当て、伝統的な日本画のミディウムと樹脂を組み合わせた新たな表現に臨んでいます。
川又は、日本画のミディウムである絹や岩絵具を最大限に生かせる方法に関して考察を重ねた結果、伝統的な形式である軸装を脱却し、岩絵具により描かれた絹を樹脂でコーティングすることにより、 その描写されたイメージの持つ透明感を活かす手法を新たに取り入れました。このことより、作品は光の当たり方や角度の違いによって鑑賞者に違った印象を与え、同じ対象に対して人それぞれ違った捉え方があることや、価値観の相違などを示唆します。
今回のテーマである人の感情、内面、心象の揺らぎのようなものを、軸装からの脱却によって可能になった岩絵具の絶妙な加減の薄塗りや、絹の透明感が繊細に表現しています。 このような手法によって描かれた顔の表情からは、人の内面の複雑さや、敏感さを読みとることができ、植物やヒビのような模様は心の多様な内面世界を描かれた人物に投影または付加しているようにも見えます。 川又は、生活や環境の変化から、自分と対峙する時間が増えたことにより、人の心や感情の問題について考えることが多くなったといいます。そのことがこれまで制作してきた壮大なテーマから、よりパーソナルで素直な表情の表現へと繋がったと言えるかもしれません。 ぜひこの機会にご高覧賜りますようよろしくお願い申し上げます。
生命の循環
前回の生きるというテーマに加え、心の繊細さ、不安、葛藤、依存などの複雑な感情を描こうと思う。
自己は自分以外の何者でもなく、他者と完璧に感情を共有することは難しい。
個人の価値観はそれぞれ独立したものであり、同じ言葉でもその解釈は微妙なずれが生じてくる。
何が真実で何が虚構であるのか。
自分自身はどうなのか。
それぞれ同じものを見ていても、またそれぞれで違うものが重なって見えている。
そんな繊細な感情のずれを、視覚的に表現できないかと考えた。