桑島 秀樹
「TTL (Through The Lens)」
会 期:2012年7月14日(土)~8月4日(土)
閉廊日:毎週日・月曜 開廊時間:12:00~19:00
オープニングパーティー 7月14日(土)18:00~
このたび YOD Galleryでは、大阪の写真家・アーティストである 桑島秀樹の個展を開催いたします。
桑島は、仕上がりを綿密に想定し、慎重に並べられたグラスやデキャンタを大判のカメラにて撮影、精度の高いデジタル技術でガラスの透明感を生かした多層レイヤーを大型の印画紙に銀塩写真と同様の方法でプリントするという技法で制作しています。幾度にも重ねられた被写体の物質感は、光と影により奥深く表現され、見るものを包み込むようなダイナミックな領域へと増幅していく。未知なる複雑な構造物か、また曼荼羅を思わせるような壮大な画面は、桑島がひとつひとつ手作業で高精度な位置あわせによって生み出されたものである。その緻密で神秘的な景色は、我々を静かに圧倒し、レンズの中の異次元にいざないます。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
"TTL" (Through The Lens)
カメラという暗箱は私にとってはこの上ない自由を感じるのぞき箱なのです。
「ガラス」を見れば誰がどこからどう見ても「ガラス」と答えようものですが、ひとたびカメラという箱を通せばたちまち視覚的な「ガラス」本来の性格を何ものかにすり替える事も可能なのです。
カメラは誰が持ってもその性質は変わりませんが、別軸の要素としてその使い手に備わった技術、また極めて個人的な美意識や感情に基づいたコントロールがなされれば単純な光とモノの相関性は「作品」という狭義的でありながらも大変な魅力を持った創作物になり得るのです。
私が実制作に当たって最も頼りにしている一つの眼、すなわちレンズは立体として肉眼で得た多くの情報をファインダーという小窓に平面という体裁で表出させ、編集したい情報のみを提示してくれます。
そしてそのレンズを従えたカメラを測量機さながらに見立て、あらゆる事物を用いて組み上げ、構成、考察を繰り返す、つまり3次元と2次元との往来による行程の多層性が作品を創り上げる軸となるのです。
私は写真家ではありますが私にとってのリアリティとは「決定的瞬間」のそれをさすものではなく、レンズを通した様々な制作の工程による時間そのものがリアリティなのです。